これからの「DMP」の話をしよう~SATORI中野学様~

松本 健太郎

 

DMPを使いこなすマーケター・中野学

[松本] 今回のゲストはSATORI株式会社の中野学さんです。中野さんはサイエンスとサイコロジーを併せ持つマーケターだと思っていて、本当に尊敬しているんです。今日はよろしくお願いします。

[中野] 尊敬!ありがとうございます。私もデータサイエンティストの松本さんを尊敬しています。いつもマメ研のインタビューを熟読しているのですが、毎回結構なボリュームありますよね。大いなる覚悟を持って今日この場に挑んでいます。下手なこと言って恥をかかないよう、ばっちり準備してきましたよ!(笑)

[松本] ありがとうございます(笑)。今回、インタビューをしたいと思った理由は、中野さんはDMPを使いこなして失敗も成功も経験されている数少ないマーケターの1人だと考えているからです。DMPは私もITメディアで連載をさせてもらっていて、いまだ誤解の多い領域だと感じています。だからこそスペシャリストに「DMPはなぜ必要になったのか?」「DMPは何を実現したいのか?」「これからもDMPは必要なのか?」という”そもそも論”をお聞きしたいと思っています。

いろいろとお話をお伺いしていく前に、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

[中野] 今までのキャリアを簡単にお話させていただきます。私がデジタルの世界に入ったのは2007年です。気付けばもう10年この世界に身を置いています。世の中では「10年ひとくくり」と言いますが、やっと自分の型のようなものが見えてきたかな、という実感があります。

これまでインターネット関連企業で、クライアント様のデジタルマーケティングに関する課題を解決する取り組みを一貫して行ってきました。とはいえ10年間同じ内容というわけではなく、その時代によって課題の解決方法は全然違います。例えば最初は、WEBサイトのコンサルティングのためにアクセス解析の分野に関わっていました。ページにアクセスされている時間の波をみて、主婦がサイトを見ているなど、推測をしていました。

他には、デジタルエージェンシーでコミュニケーション戦略をじっくり考えていた事もありました。提案書を100枚書いたこともあります(笑)。今は、SATORIでマーケティングオートメーションツールの拡販を行うためのマーケティング業務に携わっています。考えてみれば、ずっとデジタルマーケティングの世界にいて「コミュニケーション」を軸携わってきました。

[松本] 一貫してマーケ畑なんですね。新卒の就職活動のタイミングから、インターネットの世界、デジタルマーケティングの世界で頑張ろう!と会社を探されていたんですか?

[中野] それ聞かれるだろうなぁと思っていました(笑)。私が最初にインターネットに出会ったのは中学2年生ぐらいです。Windows95が出てきて、学校の授業でインターネットに触れて、本当感動したんです。高校生のころは自分でPC組み立てていましたね。とはいえ、大学ではそれらとは全然関係ない学部に籍を置いていて、就職活動も最初は違う業界に目を向けていました。もともと文章を書くことが好きだったので、出版社や編集プロダクション志望でした。

[松本] その当時、インターネットとは距離があった業界ですよね。いったい何があってマーケターになられたんですか?

[中野] セレンビリティみたいなものだと思うんですが…うちの大学、図書館がリッチだったんです。大正時代以降の新聞が縮小版で全て保管されていて。授業が無くて暇な時は、それを見ていたんですね。

[松本] 暇つぶしの癖がすごい!

[中野] 何を見ていたかというと、新聞広告を見ていたんです。大正や昭和の「冷蔵庫ができました!」「氷が作れるようになりました!」という広告を見て「なんと面白いコミュニケーションがあるんだろう」と思っていました。現代のバナー広告のクリエイティブと比べても、やっぱり趣がちがうんですよ。

その当時はインターネットなんかなくて、メディアとしての新聞の役割が大きな時代だったと思います。そんな時代に、いかに生活がもっと今より便利になるかが描写されているんです。今では冷蔵庫なんて当たり前かもしれませんが。ドラえもんの秘密道具みたいなワクワク感が広告から伝わるんですよね。最近で言えばiphoneが出てきたときのような感動に近いかもしれません。それでコミュニケーションの世界は面白いんだなぁ、という素養が生まれました。

 

就職活動自体は、業種に「出版」と書いている会社に就職が決まったんですね。よし、これからライターになるんだ!と意気込んでいたところで、実はインターネットの制作会社だった!という(笑)。

[松本] なんと!そこからマーケティングに寄っていったって、すごく珍しいですよね。というか、今ならちょっと問題になってもおかしくないレベル…。

[中野] そうですよね!最初は戸惑いましたよ。(笑)でもマーケティングに携わると知って、嫌だとは思わなかったんですよ。自分にも人を引きつけるメッセージが作れるだろうか?というドキドキ感がありました。それに「書く」仕事に変わりないですから。Excelなんて使ったことないし、データ分析なんて触ったこともない人間でしたけどね。

 
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最初にやったことがリスティング広告のキーワードとディスクリプションの作成です。自分で考えて、先輩のダメ出しを受けて修正して、OKをようやく貰って自分で入稿して…。それが本当にうれしくて!だって、検索すると自分で書いた文章が表示されるんですよ。デジタルってなんて面白いんだ!って思いましたね。

[松本] わかります。2007年当時、インターネットは今まで自分が接してきたメディアの中で一番距離が近いと思いました。こんな身近に、自分の作ったものができるんだ!という感動はありましたね。

[中野] 経験したことがない業界や商品のことを調べて、勉強して、知らないキーワードを見つけては入札する。もちろん、その結果は直に確認できますから、なぜ反応が悪かったのか考える。数字で成果がわかることが楽しかったですね。

 

DMPとの出会い

[松本] 毎日接する業界が違っても、普遍的な共通する”何か”があることに気付かれた。そこにマーケティングの面白さがあると思われたのですね。そうしてマーケターとしてのキャリアを築かれていく中で、DMPという単語が登場し始めたのはいつぐらいからですか?

[中野] 2013年ですね。社会人7年目です。その時は「DMPは、あちこちに散らばった色んなデータを一か所に全てまとめて、ぐるぐる回すと何か出てくる、まさに魔法の箱!」という話だったので、空想の世界だと切って捨てていました。そんなこと、できるわけないじゃん!と思って。

[松本] 私も、CRM、CPA、CVR、DSP、SSP、また新しい3文字英単語出てきたか!ぐらいの受け止め方をしていました。

あれから4年経って何が出来そうか分かってきたので、いろんな人がいろんな観点でDMPを再定義されていますよね。中野さんなら、どのようにDMPを定義されますか?

[中野] これ、すごく考えたんですよ…。私なら「DMPとはコミュニケーションデータの足し算結果を利用して生活者の輪郭をトレースする装置である」と定義します。

DMPを使う前まではコミュニケーションを「伝達する、説明する、説得する」と捉えていたんですね。でも、あるときコミュニケーションの語源を調べたら、本来は「共有する」という意味だと分かったんです。ラテン語のCommunus(コミュナス)に由来するらしいですね。日本でコミュニケーションという言葉が輸入されたときに、「相手」の存在が欠落して広まったんです。自分の思っていることだけ伝えるのはコミュニケーションとは言わないんですよ。

 
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ちょうどその頃にDMPを使うようになって、相手のことを理解する、相手に理解してもらう、この双方向性が実現するかもしれないと考えるようになって、コミュニケーションデータと定義しました。つまり、お互いのやり取りの記録の積み重ね、というわけです。

[松本] ”コミュニケーションデータ”と定義すると、デジタルに縛られないですね。DMPってWEBのデータと同義になると思っている人が多いんですよ。しかし中野さんは、どうデジタル化するかという課題はあるものの、オフラインを含めてコミュニケーションデータとしてDMPで扱えなければならない、と訴えられているのかなぁと思っています。

[中野] データは、アウトプットされた結果ですからね。デジタルか否かは、どこにアウトプットしたかという話かと思っています。

[松本] 突っ込んで聞きたいのは「装置」という表現です。DMPにはシステムという側面がありますが、そのように定義してしまうとブラウザの中に閉じ込められてしまいますよね。マーケターがPCと向き合って使うものと思えます。

[中野] DMPは生活者の顔をイメージしながら使うもので、私はマーケティングの仮説を助けてくれる「相棒」として使っているつもりなんです。確かに「道具=ツール」ではあるのですが、システムと言ってしまうと、決まったインプットがあれば、それに適うアウトプットが自動で出力されるイメージがありますよね。

でも「装置」と表現すると、機能と使い方が分離できるな、と思っていて。例えば掃除機とか冷蔵庫とか、人それぞれ使い方が違うじゃないですか。コートに付いた花粉を掃除機で吸う人がいれば、乾燥させるために冷蔵庫の中で物を保管する人もいる。DMPも同じで、人それぞれ使い方が違います。ボタンを押せば決まったフォーマットに何かが返ってくる考え方の延長線上にいては、DMPは使いこなせませんね

[松本] システムと定義すると主が「DMP」で従が「人」になりますが、装置と定義すると主が「人」で従が「DMP」になりそうですね。システムの枠にも囚われずにすみます。

[中野] DMPを魔法の箱と表現した時代がありました。あのころはみんなDMPをうまく使えていないものの、きっとDMPに頼めばなんでもできるんだ!と思っていた。これも「システム」幻想の影響だと思いますね。システムが何かやってくれると思うから「魔法の箱」という言い方なんです。やるのは自分なんですよ。

 

DMPを使ってマーケターは何を実現するのか

[松本] DMPがマーケターにとっての相棒だとしたら、マーケターはDMPを使って何が実現できるようになるのでしょうか?

[中野] DMPを「生活者の輪郭をトレースする」と表現したのですが、DMPが無かった時代って”生活者”を勘や経験で「若い女性に使って欲しい化粧品だから10代、20代の女性が中心の媒体でアプローチしましょう!」という、ざっくりとした表現をしていました。実際には、もう少し細かく「層」を表現しますけどね。でもまぁ、具体的に誰だよ?という話です。

日本には10代、20代の女性は統計的には1300万ぐらい居ますが、彼女らに合致するメッセージは何?そんな幅広いメッセージある?って思うんですよ。それに、本当にその商品を若い女性が使いたいかどうかもわからない。果たして、それでWEBに広告を出稿しているから「デジタルマーケティング」と言ってしまっていいのだろうか。

[松本] 本で読んだ記憶があるのですが、やしきたかじんさんがディレクターから「主婦に受ける話してくださいよー」と言われて、「お前の言っている主婦は誰や!」と反論したという逸話があります。60歳過ぎた貴婦人も、16歳で子供産んだヤンキーも、考えてみれば主婦なんですよ。要は顔が見えない話をするな!ってことだと思うのですが、さすがたかじんさんは一流のマーケターですよね。○○層みたいな曖昧な定義で、しかも送り手目線で受け手を語っていたのがDMP前ということなのかぁ…。

[中野] 勘や経験で成果を挙げられる天才肌のマーケターもいます。けど、それだけでは私のようなマーケターは打率が一定以上は上がらない、と伝えたいんです。DMPを使うといろんなデータから生活者の顔が立体的になるんですよね。メインの生活者とのコミュニケーションが発生しながら「意外と男性もサイトに訪れるんだな」「意外と20代の評判悪いんだな」という発見を得られるわけです。

DMPをなぜ「足し算」と言ったかといえば、誕生前は「引き算」のマーケティングだと思うからです。Googleが用意しているオーディエンスのセグメントが2,000個あったとして、反応が良いセグメントが1個だと分かったら、残り1,999個は使えないからゴミなんですよ。ディスプレイ広告の最適化をするのも、結果が出ない掲載面はどんどん間引いて、残った掲載面や、バナークリエイティブが一番良いという見方ですよね。足せないんです。

DMPは逆の発想で、複数のデータを追加していくほど特徴がより現れていく。発想を変えないとダメだな、と思っています。これがDMPを触るときに意識していることです。

[松本] マーケターとしての仕事の進め方に、大きく変化が起きそうですね。

[中野] 例として広告出稿のためのメディアプランを考える場合を取り上げます。生活者の輪郭を知るにはメディアが用意している媒体の調査データ、統計局が発表している国勢調査のようなデータ、ほかに企業が発表しているアンケートなどのデータ。そうしたデータを横に並べて「未婚率の女性は30%いて、このメディアの女性比率が4万人だから、含有率が…」って。

もはやフェルミ推定マーケティングですよ。調査元が違うデータを単純に掛け算することは果たしていいのだろうか?と不安でした。DMPがこういう仕事を変えようとしているんです。

[松本] 逆に、今のタイミングでDMPが実現できていないことってありますか?

[中野] 人間の感情ですね。輪郭を捉えるのに必要ですが、データとしては取れていません。そのブランドに対してハッピーな感情を抱いているのか、不安な感情を抱いているのか。エモーショナルなデータはDMPではまだまだ実現は難しいようですね。

[松本] 人間の内面をデータで表現するとなるとハードルが上がりそうですね。

[中野] リアルタイムビッディングという言葉があるじゃないですか。アプローチはリアルタイムなんだけど、感情の反応についてはリアルタイムなデータを取れていないんですよね。もしかしたら広告に嫌悪感に抱かれたり、リタゲがしつこいって思われたりしているかもしれない。それって“共有”の概念が欠落しているコミュニケーションだと思うんですよね。相手側の反応を捉えていないので、そばに寄り添えていない感がありますよね。

[松本] すごく悲しい感情を抱いているときに、ちょっと俺の話聞いてよと肩をたたく人はいませんよね

[中野] 指の動きの速さ、デバイスの角度、スマートフォンと顔の近さ、そういう装置自身のデータから分かる可能性が未来にはあるかもしれないとエンジニアから聞きました。感情表現としてのメトリクスは誕生が望まれます。そういう意味で、Facebookのいいねアイコンって感情表現が6個に増えましたよね。あれ、すごく良いなぁって思っています。

 

DMPを使って得た「経験」―必要なのは○○だ!

[松本] 次に、DMPを活用した事例、というか「経験」をお聞きしていいですか?

[中野] 業種も規模も全く違う複数の事業者間でユーザーのデータを統合させたことがあります。業種が違うからこそ、共同プロモーションをしたら面白い何かが生まれるんじゃない?と話をして、合わせて数千ぐらいのユニークユーザーをマージさせたんです。どのくらい充実したデータが作れるかワクワクしたのですが、各社間でどれくらい重複するかフタを開けると数%ぐらい(笑)。

[松本] あー…それは、あるあるですね。日常のアクティビティが違うんですよね。「パンが無ければケーキを食べれば良いのに問題」です。

[中野] 生活者の“情報”がどんなにあっても、インターネット上での生活“圏”が違っていれば「足し算」はできないんだなぁという気づきがありましたね。

事業者を超えたデータ活用を1年ぐらいかけて取り組んでいましたが、データが紐付く、紐付かないだけにとどまらないインサイトを発見することができました。

 
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生々しい話になるので、実例とは異なる業界に置き換えて話をします。例えば、30代男性に向けて新しいアパレルブランドを知ってもらうためのコミュニケーション戦略を考えるとき、30代が多く訪問するとされるAという媒体、Bという媒体両方狙いにいこうとして、Bという媒体はアパレルブランドのユーザーリストと1%も紐付かないとなれば、Bという媒体に集まっている人ってファッションの興味が薄い人が多くないですか?という話になりますよね。という解釈をしたことがありました。

[松本] 同じ「層」であったとしても年収が違えばアクティビティも違うでしょうし、業種をまたいだからこその気付きですよね。自社のマーケティングをするときに、自社のみのデータで考えていてはダメだという時代に来ているんですね。

[中野] 例えば、化粧品にしか興味を持たない女性なんていないですよね。化粧品のサイトに訪れた背景を深堀りしていかないといけない。それが1人の輪郭を浮かび上がらせるコミュニケーションだと思うんです。

 

[松本] これは失敗やった!という経験も聞きたいです。

[中野] それこそ、紐付けたら実際には数%だったことです。これは泣けましたね。ユーザーを一意に表すキーの考え方を変えた瞬間です。あっ、、、くっ付かないんだ、、、と。マーケターもシステムを理解しないといけないな、と思うようになりました

[松本] 1回こっきり使い捨てCookieなんてザラにありますし、ロボットもいっぱい紛れていますからね。今はPCブラウザ、スマホブラウザ、スマホアプリ、アプリ内ブラウザとユーザーを一意に表すキーがバラバラに発効されています。Cookieがデバイスではなくブラウザと対になるので、余計に数が増えてますよね。これをどうにかできないか弊社も相当努力しています。さらに今後はリアル店舗デバイスが加わるでしょう。

[中野] システムを肌で理解しているか、これは結構大事だと思いますね。代理店勤めをした時に、広告配信や計測ツールを扱う会社の方と多く知り合って、表面上はシステムの仕組みを理解しているつもりになっていました。でも、深く考えずにできるような気になっているだけだったんです。

実際にDMPに向かい合うと「はて、これどうやってやるんだっけな?」となる。もう1回ツールベンダーに話を聞くと「いやー、中野さんそれできないですとエンジニアに言われました」と営業から言われたこともあって(笑)。伝聞の伝聞で顧客に話していたことが恥ずかしいし、お互いどうやって実現するのか理解していないのにDMP使って何をするか話しているって格好悪いですよね。

[松本] 今できる、開発したらできる、開発したらできるかもしれない、今できない、今後も恐らくできない、そうした線引きをエンジニアだけでやっていいのか?という問題もありますからね。すべてのエンジニアがマーケティングの未来に目を向けて仕事をしているわけではないでしょうから、牽制するという意味でもマーケターがシステムを知ることは大事だと思います。

 

ところで、マーケターの人たちにDMPという存在が加わったことで、中野さんが先ほどおっしゃられたような助かっている部分がある一方で、システム、特にデータを理解するという苦労が必要なことも明らかになってきましたね。ER図は必須かもしれない。

[中野] まさにです。複数社間のDMPでもそうだったんですが、エクセルのvlookupの感覚で集計作業なんてすぐできるでしょ?と思っていましたし、そのような態度でDMPのベンダーに依頼したんですが「わけのわからないことを言うな!」と一括されました(笑)。当時を振り返ると大反省ですよ。今は、実際にTreasureDataを触って自分でSQLを叩いてデータを集計する事で作業の大変さが以前よりは、肌感覚で分かるようになりました。

[松本] では、なぜそういう苦労をしてまでDMPを使わないといけないか。先ほど中野さんがおっしゃられた「打率を上げる」に繋がりますね。

[中野] 公開されているメディア媒体資料だけでは、私は安心してコミュニケーション設計ができないですね。ヒットの確率を上げていくためには、DMPは大事な相棒です。フェルミ推定ができる超優秀なマーケターもいるかもしれませんが全員じゃないですからね。それに、どんなに熟練の戦士でも仮説は外します。DMPを使うと、生活者の輪郭がカラフルに見えてくる事があるんです(笑)。

仮説を立てること自体がマーケターの1つの仕事です。だから、仮説設計そのものをDMPにやってもらうというのは、かなり遠い先の未来だと思います。けど、仮説検証、確かめるという仕事はDMPでやれるようになりました。そして、DMP上の膨大なデータを眺めていてインサイトを発見できるようになりました

 

DMPの今後。この先何を変えていくべきか

[松本] DMPとして、今後何ができることが望ましいでしょう?

[中野] いくつか課題があると思います。加工された3rdPartyを使う場合、広がりに欠けるんですよね。もう少しローデータレベルで自由に使いたいですよね。GAの基礎集計されたテンプレートデータも掛け算したところで細かいパターンを作れないです。DMPの世界ではより「生」にこだわるべきではないかと思います

もう1つは、本当に必要なデータ量を確保することが大切です。3rdPartyのデータを買ってきました!じゃダメなんですよね。既存のデータに紐付くかが分からないから。

[松本] 日本では、データを買うといえば名簿屋を思い浮かべる方はいらっしゃいますよね。Trackingを目的とするCookieを拒否されていたり、3rdPartyを拒否されていたりする方は私の感覚値では7%ほどいらっしゃいます。

その7%も含めて100%精緻に知りたい!という方もいらっしゃるのですが、それはユーザーから”私にコミュニケーションしてくれるな”という態度の表明なので、それを無視して”そんなの言わんで話しようぜ!”と接するのは違いますよ、と言っています。DMPを使って対象を広げること、そしてプライバシーの問題は考えないといけない話題ですね。

[中野] 改正個人情報保護法が平成29年5月に施行されますが、遵守すべき義務を守ることを前提にデータの活用を促進することになっています。私はこれをポジティブに捉えていますが、一方で「あなたの個人情報が勝手に使われる可能性があります!」という誤った解釈を伝える報道もあるかもしれません。

[松本] まぁ、個人情報と匿名加工情報の違いぐらいは報道する側も知っていてほしいですね。

[中野] データを使うこと自体がダメなことだという曲解した解釈は起きてほしくないと思いますし、データを利用する側もそういう解釈が起こるような強引なマーケティングはして欲しくない。「コミュニケーションデータ」って、ユーザー自身とマーケターの間の相互理解が必要になんですね。ユーザーからの理解が欠けていれば、押し売りに近い関係性にしかならないと思うんです。

 
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[松本] ウェブだけじゃないデジタルデータを使ったDMPは今後ますます増えていくと思うのですが、最後にこれから先にDMPのここを変えたいという想いがあれば聞きたいです。

[中野] すごく大事な質問ですよね…DMPを活用できる企業の裾野を広げることではないでしょうか。これが変われば、理解も広がるし、警戒心も下がるし、企業間のコラボレーションも広がると思うのです。裾野が広がると、自分も想像していなかったデータが生まれそうです。

今は使っている人が少ないので誤解している部分もあると思います。言い換えれば、これから作っていくフェーズにあるので、DMPを使えるマーケターを増やしていきたいですね

[松本] 本日はありがとうございました!