映画「シン・ゴジラ」を観る前に知っておきたい2つのキーワード

松本 健太郎

 

今回は、いま話題の「シン・ゴジラ」に関するデータビジュアライゼーションに挑戦します!

あまり期待せずに見に行ったら、内容の面白さに興奮し、メッセージの深さに考えさせられ、もう1度見ようと思っています。

今までゴジラシリーズを見たことの無い私でも楽しめた映画です。

多くの人にも劇場に足を運んで欲しいと思い、「ゴジラ」映画に関する2つのキーワードを取り上げたいと思います。

 

その1:邦画実写シリーズ物で初の累計観客動員数1億人

ゴジラ映画を見たことが無くても、ゴジラという単語を知らない人はいないでしょう。日本が世界に誇る怪獣映画であり、米国でもリメイクされた数少ない映画の1つです。

8月1日には、公開からたった4日で71万人の観客動員数を集め、「ゴジラ」シリーズ全体の観客動員数が1億人を突破するというニュースが報じられました。

これまで邦画でシリーズ累計観客動員数1億人突破を誇るのは映画「ドラえもん」シリーズ(1980年〜)のみで、実写映画としては初となります。

ちなみに、邦画実写シリーズで次に観客動員数が多いのは「男はつらいよ」シリーズで約7,959万人。渥美清さんを超える名優が出るとも考えられず、改めてゴジラの偉大さが伺い知れます。

さらに、「ドラえもん」シリーズは通算33作目での突破ですが、「ゴジラ」シリーズは通算29本目で1億人突破ですから、コンテンツの持っている求心力・破壊力がどれほど凄いかがお分かりいただけるかと思います。

 

ところが、「ゴジラ」シリーズが簡単に1億人に手を伸ばせたかと言えば、決してそんなことはありません。

そのことがわかる以下のグラフをご覧下さい。

上段の折れ線グラフは、「ゴジラ」「ドラえもん」「男はつらいよ」各シリーズの累計観客動員数の推移です。

下段の棒グラフは、その年に公開された各シリーズの観客動員数を積み上げて表しています。「男はつらいよ」シリーズは基本的に年2回興行だったため、そのようにしました。

 

 

ゴジラは1954年11月の第1作以来、順調に観客動員数を伸ばしていきます。1962年には「キングコング対ゴジラ」で観客動員数1255万人を突破、その不動の位置を築きます。

ただし、その後は右肩下がり、1975年には「メカゴジラの逆襲」で観客動員数97万人という、当時も、またシリーズ全体通しても最低の記録を叩き出し、1984年まで約10年もの長い封印が続くことになります。

その大きな理由の1つとして上げられるのが「映画離れ」です。以下のグラフをご覧下さい。

上段の面グラフは、年単位の、映画館入場者数を表しています。下段の100%面グラフは、興行収入から算出した洋画・邦画のシェアを表しています。

 

 

1958年の11億2700万人をピークに、以降は急激な右肩下がりが続き「映画斜陽の時代」に突入します。テレビの普及率と共に、映画は娯楽の王様の位置から転げ落ちていきました。

さらに1975年は洋画のシェアが初めて50%を突破し、邦画の缶汁映画に対するトレンドは向かい風もいいところだったのです。

ちなみに後述しますが、もう1つの理由としてゴジラをパニック映画・反核映画というスタンスから、より大衆受けするために特撮映画・怪獣映画というスタンスに切り替えたものの逆に大衆から見放されたという滑稽な歴史もあります。なので一概に映画離れという外的要因が全てとも言えません…。

以降、「男はつらいよ」シリーズが「ゴジラ」シリーズを猛追し、年2回興行で安定的に300〜400万の観客動員数を獲得、1991年には約300万人差にまで迫られましたが、翌年の「ゴジラvsモスラ」が大ヒットしてなんとか凌ぎ切ります

 

ところで、1995年には渥美清氏の死去により「男はつらいよ」シリーズが終了、「ゴジラシリーズ」も米国リメイクのためいったんシリーズが「封印」と、相次いて邦画を代表するキラーコンテンツが無くなったためか、2005年ごろまで邦画冬の時代が続きます。

一度下火になった邦画に対する観客の目は曇っていたのか、1999年から続くミレニアムシリーズは興行的に惨敗が続き、2004年をもって「現在の技術では今以上のものは作れない」として2016年の「シン・ゴジラ」までの12年間、封印が続きます。

このときのゴジラの累計観客動員数、9,927万でした。あと73万人…。

一方、1980年に始まった「ドラえもん」シリーズは小学生相手に根強い人気を見せ、テレビアニメシリーズの影響もあってか安定的に毎年300万人強の観客動員数を獲得、「ゴジラ」シリーズを猛追します。

グラフで見ると、鉄板ですね…。

2006年には「のび太の恐竜2006」で「男はつらいよ」シリーズ累計観客動員数を追い抜くと、2013年には「のび太のひみつ道具博物館」でゴジラもなし得なかったシリーズ累計観客動員数1億人突破を達成します。

 

こうしてみると、ゴジラは時代の追い風を受けて愛されるキャラクターとなり、時代の転換期に翻弄されたことがわかります。

どちらかといえば東宝のマーケティング部門の「下手こいたぁ~」感が際立ちますけどね。

 

その2:ゴジラはどの街を破壊してきたのか?

ゴジラの魅力の1つに、自分の知っている街がゴジラや登場する怪獣によって破壊されてしまうシーンがあげられます。

「シン・ゴジラ」でも、蒲田や品川、鎌倉、武蔵小杉、中央区・千代田区含む東京駅周辺と多くの街が破壊され尽くしました。そのシーンのリアルさ、儚さは筆舌尽くしがたいものがあります。

そこで、今までゴジラや、ゴジラに登場する怪獣が破壊した街を都道府県単位で集計してみました。(「シン・ゴジラ」を除く)

ちなみに、明らかに進行経路上この都道府県を通過してるだろ!というツッコミはありつつも、そうしたシーンが無いことから無視している府県はあります。福島県とか。

 

 

海に囲まれている島国・日本ですが、ゴジラが海から上陸することが多いためか、海に面した都道府県が破壊される傾向にあるようです。

まず、圧倒的に多いのが東京です。17回を数えます。ゴジラ全28作品中なので、結構な破壊され具合です。

その次に多いのが、実は静岡県です。富士山麓でゴジラが戦うことが多いことが理由です。

 

実は、四国には唯一怪獣は上陸していません。

「ゴジラvsデストロイア」で愛媛県の伊方発電所に接近しましたが寸前で阻止されており、四国安全都市と一部でネタにされるくらいです。

また、四国に怪獣が上陸していないのは原子力発電所がないからだ!と一部で言われていますが、原発の無い沖縄県には2回も上陸しているので、その説は当てはまらないと思います。

 

あとは全国的に満遍なく上陸しているのですが、あまり大きな声で「高い建物が無いところは壊し甲斐が無いから上陸していない!」とか言わないように。

どちらかといえば、1回しか上陸していない県はサザエさんのオープニング並みの「地方にゴジラがやってきた!キャンペーン」感があります

 

最後に:次回作はあるのか?(ネタバレあり!)

今回、「シン・ゴジラ」を楽しむための2つキーワードをグラフで可視化してみました。

最後に皆さんが気になるのは「続編はあるのか?」でしょう。今までの「ゴジラシリーズ」の経緯から考えるに「ある」が答だと思います。

そして次回作の舞台は間違いなく関西、特に大阪です。

1954年版ゴジラの2作目「ゴジラの逆襲」も、長い沈黙を経て復活した1984版ゴジラの次作「ゴジラvsビオランテ」も、大阪が舞台でした。これは、お約束のようなものです。

大阪には今、日本一観光客が多いUSJや日本一高いあべのハルカス、日本一タレントの力で観光客が来ているひらかたパークがあります。このへんを破壊して欲しいところですね。

 

ただし、次回作の監督も庵野秀明氏かどうかはわかりません。そうなると、次回作にどこまで期待できるでしょうか。

「シン・ゴジラ」がここまでヒットしている理由は、エヴァファンが足を運んでいる以外に、庵野氏作の脚本の秀逸さがあげられると思います。

そもそも「ゴジラ」は当初、怪獣映画というよりパニック、反核、政治が色彩濃い映画でした。ですが興行成績を上げるために特撮・怪獣系にテイストを変更して(たまに原点に戻ろうとしますが至らず)現在にいたっています。

今回の「シン・ゴジラ」はそういた背景から「完全なる原点回帰」という声が多くあります。特に、ゴジラの初回上陸ルートや、放射能熱線を乱射して松屋を真っ二つにするシーンが1954年版ゴジラと一緒なので、なおさらです。

 

その他に、東日本大震災及び関連するドタバタ劇を彷彿とさせるシーンが何度も登場しており、「シン・ゴジラ」を震災映画だと評する人もいます

つまり「シン・ゴジラ」は庵野氏にとって、しいゴジラでありながら、1954年版ゴジラを化させたの後継者だけでなく、災で死んでしまった方に対する祈りを捧げるレクイエムではなかったか?と思うのです。

果たして庵野監督による第2作はあり得るのか?それよりエヴァ手掛けるのではないか…?

 

そこで私が期待しているのは樋口真嗣監督です。

「進撃の巨人」ではゴジラに勝るとも劣らない破壊神っぷりを披露してくれましたが、「ローレライ」「日本沈没」は特撮に関しては高く満足しています。ただし、人間の機敏な心に関する撮影はからきしですが。

今作においても、その力量を大いに発揮してくれたなと感じています。特に、パニック映画の最高傑作である「新幹線大爆破」のワンシーン(ひかりが並走して時限爆弾を取り除くシーン)をまんまインスパイアしてくれて、嬉しくて涙が出ました

 

映画やドラマとなると、なぜかいつも役者にばかり注目が集まりますが、脚本が良くなければ演技にも限界があります。ソフトウェアは正しいものを正しくつくるのが鉄則ですが、コンテンツも同様です。

その意味で、作り手である脚本家や監督や撮影などの裏方の力量が今後問われる映画が誕生したことが、喜ばしくもあります。

追記:シン・ゴジラの答え合わせをしよう!

(2016年09月09日追記)

11月3日に、庵野監督全面慣習の元、「ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ」が発刊されます。

この本では今までのゴジラの謎の答え合わせが期待されており、所長も即効でポチりました。

 

photo
ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ
カラー、東宝
グラウンドワークス 2016-11-03

 

ちょっとお値段張るのですが、ここまでゴジラに嵌ったんだから、まぁいいか…と思っております。