テレビCMの貢献度をどう捉えれば、消費者の実態に近づくのか?


ネクソンは、1994年に韓国ソウル市で設立され、その後日本へ本社を移転しました。創業以来、良質なオンラインゲーム、モバイルゲーム及びソーシャルゲームを制作・開発、配信してきました。

代表的なゲームタイトルである「メイプルストーリー」、「アラド戦記」、「カウンターストライク・オンライン」「マビノギ」及び「サドンアタック」といったネクソンが提供する豊富なゲームタイトルは、より幅広いジャンル、多様なユーザー層及び世界中の潜在的ユーザーへ訴求しています。

現在では、50を超えるゲームタイトルを配信し、アジア・北米・南米・欧州を初めとする100を超える国及び地域にてサービスを展開しています。

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株式会社ネクソン 新規事業室 萩原 俊太郎 様
1983年生まれ。早稲田大学卒業後、大手ネット広告代理店にて、マーケティング部・データ分析研究所に所属。定量分析を軸として、包括的なウェブマーケテイングプログラムの作成~実行~検証などに従事。その後、株式会社ネクソン マーケティング室にてIMCプログラムの作成~検証、新規事業室にてモバイルソーシャルゲームの事業開発・企画に従事。

まずは出来ることからチャレンジ。TVCMの貢献度測定へ挑戦!

── まず現状のマーケティング施策は、どのような事を行っていらっしゃいますか?
今やっているのはテレビCM、ウェブ、雑誌の広告出稿に加え、SNSや動画サイトによる情報発信、パブリシティ露出など、既存ユーザーや新規獲得に向け満遍なく施策を打っています。中でも予算の大部分をテレビCMに割いているというのが現状です。
── これでいうとCMにかける期待は大きい状況なんでしょうか?
期待もありますが、今までやってきている広告手法でもあるため、継続的に実施している、という側面もあります。
昔、CMをやめて、獲得などのKPIが減少した、ということもありますし。
── そうなんですね。それではテレビCMの役割の違いを何か意識してプランニングされているのでしょうか。
CMは新規ユーザーの獲得と既存顧客の呼び戻し、という主目的で実施しています。
他社同様、テレビCMでザックリと集めて、ウェブで刈取るようなイメージです。
── テレビCMのプランニングは広告代理店に依頼されているんですよね?
中身の企画自体は広告代理店さんに出稿目的や概要を伝えて、企画案をもらって、それをさらに社内で検討する、という流れです。”今回こういう新作ゲームが出る”とか、”こういうアップデートがあるのでそれを訴求したり”とか、それを基にして、企画・クリエイティブを依頼して、絵コンテでイメージ合わせたり…そういう感じです。
── そうやって作られているテレビCMを施策として進める上で、課題や分析をやることでこんなことを知りたい!というものは具体的にあったのでしょうか。
そうですね、テレビCMはインパクトがあるだろう、と誰でも漠然と思っていると思うのですが、それが具体的にどの程度か?を可視化することで、現状に満足せず、より良いメディアプランニングをしていきたい(今回はテレビCMにスポットを当てていますが、もちろん、全体の広告施策を踏まえた上で)、という意図がありました。これは、どの会社さんも、同様に思われていることかと思います。
こういった話になると「オフラインは正確に数値化出来ない」「そもそも数値化するものじゃない」「テレビCMの価値は短絡的ではない」など、さまざまな意見があると思いますが、それで話を終わらせず、今出来ることを工夫して、より、“今の消費者の実態”に近づくべきです。我々は実務家で、広告の”投資”を行っています。第三者の評論家ではありません。既に確立されたマーケティングフレームワークを、何の工夫もなしに利用するのも論外です。
結果的に”参考”として程遠かったとしても、全く無駄だったとしても、やらずに否定も肯定も出来ない。と以前から強く思っていました。
決して確信があるわけでもなんでもありませんが、今までに無い視点でCM効果を表現できる環境を、ある程度整備出来た今、トライしてみることは一定の価値があると考えました。
── まずできるところを、きちんとやってみようと?
やってみたら、今よりも、もう少しテレビCMに対するユーザーの態度変容(影響)が見えてくるかもしれない。アドエビスで求める水準のウェブ効果測定データ(ログ)も貯めることが出来、今までにない分析環境基盤が整備されたのであれば、一度やってみようということになりました。
分析定義:テレビCMの放映時間~放映後1時間の間にサイトに流入してきたユーザーを【テレビCMの影響による流入】と定義。
── なるほど。先程仰られていたCMでインパクトがあるだろうという、インパクトとは、どのようなものを想定されていましたか?
基本的にはサイトに来訪するセッション数、あとは、(社内でもテレビCMを見て、いきなりCVするというのは難しい、ということは理解できることなのですが)一応、CVも見ています。
テレビCMに求める効果としては、新規ユーザー獲得、既存ユーザー呼び戻し、その他社内で設けているKPIがあります。
ただ、期待している割にはその効果が曖昧な訳です。
マクロ的な効果検証が、今までの限界だったのです。
株式会社ネクソンのビジネスモデル

イメージとのギャップ…新たに見えたテレビCMの貢献度

── そうですね。今はテレビCMやマス広告の効果はマクロ的な想定でしかなくて、みんなのイメージの中でマーケティングが進んでいたり…
そうですね、あと、やはり効果測定ツールなどを見ても、テレビCMの放映タイミングで来訪者のグラフが「ぽこっ」と上がるわけですよね。やっぱ来訪者が増えるんだな~っていうイメージは持ってます。ただ、今回、更に深く分析をした結果、上がるのは確かに上がるのだけれど、来訪者数もCVも全体のインパクトとしては下記グラフぐらい、という結果でした。
提供番組放映時間~その後一時間以内に、自然検索または広告クリックから当ウェブサイトに訪問したユーザーとその他の訪問者を抽出し比較した 。また「きっかけ(新規来訪)」と「リマインド(再訪問)」は広告や自然検索などで過去3か月間の間にサイト流入があったかどうか?で判断している。
※提供番組放映時間~その後一時間以内に、自然検索または広告クリックから当ウェブサイトに訪問したユーザーとその他の訪問者を抽出し比較した 。また「きっかけ(新規来訪)」と「リマインド(再訪問)」は広告や自然検索などで過去3か月間の間にサイト流入があったかどうか?で判断している。
── 棒グラフのところですね。…確かに。
やはり、テレビCMが流れたその瞬間の「ぽこっ」って上がる反応は、時系列で見れば出るのですが、全体の中での影響具合は、私が想定していた以上に低いことがわかったんです。
上がるのは当たり前で、テレビCMや他の施策を実施して100人集めました。そのうちテレビCMの影響による成果は、期待される割に少なかったのであれば、素直に受け入れられないのです。
もっと具体的に言うと、アドエビスで日々のセッションとかユーザー数の平均が計測できます。ここにCMを打つとサイトのアクセスは上がるといえば上がります。

ただ、平均と、盛り上がっているところの差分はどれくらいか?というと、弊社にとってはそこまで大きくない「1日当たり数千セッション」だったりするのです。では、単純に数千セッションを集めるために必要なウェブ純広告予算はというと テレビCMの1/3程度です。結果として、基本的には上がるのだけど、テレビCMにしてはインパクトが弱いという結論になっています。

── そのインパクトが弱い・少ないという感覚は以前からあったのですか?
いえ。
単純に、「伝統的に、最も力があり、ユーザーにリーチできるメディア」は“テレビCM”と想定していたのに、前述の棒グラフのような比率は想定より小さいのではないか?と思いました。
こんなもんだ、と言われればそうかもしれませんが、仮にそうだとしても、その比率(テレビCMを用いたコミュニケーション)を高めていくために今後何をしたらよいか?という、ネクストアクションの“方向性“や“基準“を生み、建設的な方向に進められるのではないか?と考えています。

計測データから読み取れた”現在の消費者(ターゲット)”とのズレ

── テレビCMが流れると、ウェブの流入が浮き上がってるのは分かっていた、ということですね。
提供枠CM実施時の反応を時系列でみると、一応「ぽこっ」と上がりはします。だからテレビCM見られていたよね、効果あったよね、となってしまう。確かにそうなのだけど、何の定義もなく数字を見ていても仮説は生まれません。今回のように、現在の環境で出来うる、ある程度のデータ分析の定義をしたうえでみると、期待される想定よりもインパクトは小さい。

では、今後どうするのか?というと、
【1】今までやっているテレビCM訴求自体が、消費者とのコミュニケーション・アプローチとして弱いのではないか?
ということが考えられます。次いで、
【2】現状の弊社にとってテレビCMは非効率的なので、テレビCMを削減するという選択肢が考えられる。

とはいえ、テレビCMを辞めるのは簡単ですが、もっと大枠(企業体全体)で考えると建設的なマーケティングではありません。
現状の結果を踏まえ、ネクストアクションを考えてみると、
“今訴求しているテレビCMのクリエイティブやメッセージ自体は、テレビCMという環境において現在のターゲットユーザーが反応する内容でないのではないか?”という仮説が出てきます。

ただ、現状はメッセージが弱い、刺さりにくいということを数値化できないので、これも一定の定義で分析をおこなってみました。

各タイトル用の訴求CMが流れた際に流入したユーザーが、どのタイトルにコンバージョンしたのか?をユーザー単位で計測し、プロットした図
※各タイトル用の訴求CMが流れた際に流入したユーザーが、どのタイトルにコンバージョンしたのか?をユーザー単位で計測し、プロットした図
結果的に、一定の傾向としては“訴求CM×CVタイトル”は合致していたのですが、他のタイトルに流れるユーザーが多く、かなり分散していることがわかったんです。
これも今まで感覚に頼って、何となくこうだろう…とイメージするしかなかったのですが、ウェブのデータを組みわせることにより、このような形で可視化することができました。
次回…
テレビCMが持つ影響を定量化し、実現可能でポジティブなネクストアクションを取るために
ネクソンが考えた今後の施策の方向性とは?