「かわいい」にこだわる人の「かわいい」商品を追いかける ~ベイジアンネットワークを使ったこだわり商品と心理的ベネフィットの関係性~

福角 朝美

 

気が付けば3月。まだまだ寒い日々が続きますが、バーゲンの時期もひと段落し、そろそろ春物が店頭に並ぶ時期ですね。

大阪の中心でデータ分析を叫ぶ女子にとって、買い物に関する誘惑はいっぱいありますが、実際にECやリアルの店舗で商品を見て、「よし!買おう!」と思う商品はどんな要素を持つか、ちょっと科学的に分析してみました。

今回は特に、女子が好きな「かわいい」に焦点をあて、かわいい商品を好きな人はどんな商材に惹かれるかについてアンケートの結果をベイジアンネットワークという手法を使って垣間見てみましょう。

 

1. ベイジアンネットワークとは?

ベイジアンネットワークは、トーマス・ベイズが提唱した「ベイズの定理」を利用したアルゴリズムです。ベイズの定理とは、事象Aが起きた条件下で、事象Bが起きる条件付き確率になります。

ベイズの定理 P{B/A}=P{A/B}P{B}/P{A}

 

たとえば、「風が吹けば、桶屋がもうかる」的な発想でいくと、「桶屋がもうかる」確率は、P(桶屋がもうかる/風が吹く)と表します。

そして、さらにベイジアンネットワークは、現象間の確率的な関係を図示することで理解し、予測するための手法になります。

P(桶屋がもうかる/風が吹く)は、1つの条件下での事象が起きた確率を想定していますが、実際はさまざまな要因があって、土ぼこりが目に入ったり、三味線弾きになったり、猫が減ってネズミが増えて、ネズミに桶をかじられたり、といった複数の条件下で多種多様な要因が絡み合っている事象をモデル化し、事象とそれに伴う因果関係を分かりやすくネットワークにしたものです。

 

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事象があればあるほど条件間の計算は多くなり、人間の手計算で行うには限界がありましたが、コンピュータの出現によって複数の条件下での事象が起こる確率モデルを予測することが可能になってきています。

 

2. どんな調査をおこなったか?

自分がこだわっている商材とキーワードとなる心理的ベネフィット(商品から得られるポジティブな感情)について、アンケートを行っています(n=5212)。

アンケートでは、「自分がこだわっている商品」の選択と「その商品をイメージしたときの印象語」の選択を、回答者のみなさまにお願いしています。

こだわり商品、心理的ベネフィットは、下記の表のとおりです(英語ですみません)。

 

Table1 こだわり商品
Table1 こだわり商品

 

Table2 心理的ベネフィット
Table2 心理的ベネフィット

 

分析では、それぞれの商品と心理的ベネフィットの因果関係を見たかったので、一旦すべての商材と心理的ベネフィットを対象にしています。

 

ベイジアンネットワーク分析を行うときは、頂点(vertex)といって影響を与える条件(「風が吹く」)を決めます。

「かわいい」は心理的ベネフィットになるので、心理的ベネフィットがこだわり商品の選択の条件と考え、頂点としました。

そうすることによって、リンク(辺や”edge”ともいう)と呼ばれる矢印は、「心理的ベネフィット」→「こだわり商品」という関係でつながります。また、AICと呼ばれる情報量基準を見て、あてはまりのよいモデルを作っていきます。

 

Graph1 こだわり商品と心理的ベネフィットのベイジアンネットワーク
Graph1 こだわり商品と心理的ベネフィットのベイジアンネットワーク

 

3. 「かわいい」につながる商品は?

「かわいい」にリンクがつながる商品は、結構多く「車」「PC」「スキンケア」「メイクアップ」「日用品」「キッチン用品」「ドラマ・演劇」「服」「子ども用品」「ペット用品」「釣り具」「手作り用品」「文房具」「食べ物」ということになりました。

「PC」や「釣り具」にかわいいはないやろと思いますが、これはかわいいが負の影響、つまり「かわいい」を選択していない人が「PC」や「釣り具」を選んでいる確率が高いためにリンクがあると考えられます。

 

また、不思議なことに「スキンケア」「メイクアップ」といった女性が好きそうなアイテムにも負の影響が見られます。

「スキンケア」にリンクがある他の心理的ベネフィットは「上品」「女性のため」「自然」「おしゃれ」、「メイクアップ」にリンクがある他の心理的ベネフィットは「エレガント」「自然」「「おしゃれ」「女性のため」で、すべて正のリンクでした。

これらのリンクから「かわいい」というより、もうちょっと大人の女性がイメージでき、化粧品にこだわりを持つ方は「かわいい」を選ばないのかなと推測します。

 

「食べ物」と「かわいい」の関係性もよくわかりませんが、食べ物に関してはこだわっている方が多く、自然と心理的ベネフィットの選択肢も増え、「かわいい」選択の確率も上がるのと、この「食べ物」のなかには「スイーツ」も入るのかなと考えられます。

また、この分析は「かわいい」だけはなく、他の心理的ベネフィットとの組み合わせによる確率になるので、その他の要因となる情報量によって「かわいい」が必要であったり、なかったりするのかもしれません。

 

4. さいごに

今回はアンケート調査から心理的ベネフィットとこだわり商品の関係性をベイジアンネットワークで見てみましたが、病気の診断や機械の故障原因の特定、購買行動における消費者の意思決定要因などさまざまな分野で使われています。

ベイジアンネットワークを使用する際は、ネットワークの構成が重要になるため、仮説から導かれる因果関係をもっている、あるいは持っていそうな変数を洗い出す必要があり、それが満たされれば、ビジネスでの活用の場でより広がると考えます。

でも実は、この分析は仮説があってその仮説を立証するためにアンケート設計を行ったわけではなく、まず膨大な変数から成り立つアンケートデータありきで、そこから活用できるデータがないかを探索し、分析を行っていました。

アンケート調査をする場合は、本当なら仮説を立てないといけないのですが、それはまた別の機会に。

 

この分析の詳しい内容はコチラ↓
“Value Modeling of Customer Feelings in High-involvement Merchandise” Asami Orita, Emiko Fujii, ICServ 2015, 2015年7月

 

[参考文献]
「ベイジアンネットワーク入門(1)」 須鎗弘樹, Medical Imaging Technology, Vol. 21 No.4, 2003年9月
「これならわかる!ベイズ統計学」 涌井良幸, 涌井貞美, ナツメ社, 2012年2月
「データ解析のための統計モデリング入門」 久保拓弥, 岩波書店, 2012年5月