今年度の暖冬は冬物衣料の販売不振を招くほどの異常気象なのか?

 

今回は、tableauを使ったインフォグラフィックの第3弾です。「暖冬」の可視化に挑戦したいと思います。

 

ニュースでは「今年度は暖冬だ」と報道されています。その影響でスキー場は閑散、1月なのに梅が開花、冬物衣料・家具があまり売れず、野菜が超豊作で価格が大暴落だそうです。

ただし、この中で気温との相関(因果)関係に「待った!」をかけたい現象があります。それは冬物衣料・家具の販売不振です。

果たして販売不振を「暖冬」のせいにできるほど、今年度は異常なのでしょうか。余計なお世話かもしれませんが、ちょっと検証してみましょう。

※ちなみにこのコンテンツはTableau社の記事広告ではありません!念のため!

 

そもそも「暖冬」の定義とは?

気象庁の基準で言えば、暖冬とは平年(1981年〜2010年)の平均気温に比べて気温の高い冬を指します。

日本全体を大きく北日本、東日本、西日本、沖縄・奄美の4地域に分類し、その域内の地点の平年平均気温を0.5度上回れば、その年は「この地域は暖冬である」と言われます。

北日本 網走、根室、寿都、山形、石巻
東日本 伏木、長野、水戸、飯田、銚子
西日本 境、浜田、彦根、宮崎、多度津
沖縄・奄美 名瀬、石垣島

なぜこの都市が選ばれているか、気象庁曰く「都市化による影響が比較的少なく、また、特定の地域に偏らない」からだそうです。

都市化が著しいと、いわゆる人口熱などで気温を正確に計測することができません。建物が多すぎると、地表面の非可逆的変化や市街地の蓄熱による放射冷却効果の減少など、気温に様々な影響を与えることにより「造られた温度」になってしまうわけです。

 

今年度の冬(2015年10月〜2016年3月)について気象庁は、寒候期予報にて「東日本、西日本、沖縄・奄美で6年ぶりの暖冬、10月〜12月の平均気温は全国的に平年並みか高い」と発表しています。

エルニーニョ現象の影響が大きいらしく、2015年8月の段階で、今年の冬は暖冬ではないか?という声が多数上がっていました。

 

では、この17地点の平均気温を分析すべきでしょうか?答えはノーだと思います。

今回の分析の目的は「販売不振は暖冬が理由になるか?」なので、都市化による影響が比較的少ない(=人口が少ない)地域の平均気温を分析しても意味がありません。なぜなら販売への影響が微妙だからです。

都市化の影響を大きく受けているでしょうが、三大都市圏と言われる東京、名古屋、大阪で分析するべきなのでしょう。

 

折れ線グラフで見る最低気温・最高気温の推移

東京、名古屋、大阪を対象に、2015年10月〜12月が暖冬傾向にあるか、1990年〜2014年の10月から12月にかけての最低気温・最高気温のデータと比較してみます。

気象庁の例に倣い平均気温を用いない理由として、過去に行った分析(気象庁のオープンデータを使って地球温暖化について分析してみた)で「日本全体が暖かくなっているのではなく、寒くなくなっている」ことが解ったので、最低気温・最高気温が綯い交ぜになった平均気温で分析すると結論のミスリードに繋がる可能性に言及したいと思います。

また1981年~1990年を対象としなかったのは、都市化著しい3拠点でバブル前の気温を入れても仕方がないという勝手な判断です。

 

まず推移を見てみましょう。

最低気温・最高気温の推移は以下の通りです。分かりやすいように、2015年だけ赤線で表現しました。

 

 

 

 

11月、12月と特定の日だけ最低気温、最高気温が突出しているように見えますが、全日を通して高いわけではないようです。

15年12月11日は全て突出していて、東京で24.1度も記録しています。ただし、04年12月5日に同じく東京で24.8度を記録しており、過去25年で最高に暖かかった!とも言い切れません。

 

12月月間の平均最低気温・最高気温を、色付きの表で表してみました。

 

 

 

 

こうして見ると、2004年12月が記録的な暖冬だったことがわかります。(もっとも翌年1月~3月にかけては平年並み、やや低かったようですが)

名古屋は過去25年で最も平均最高気温が高かったようですが、東京・大阪は最も高いわけではないようです。

平均最低気温については名古屋・大阪ともに過去25年で最も高かったようですが、殆どの人間の活動時間帯では無い気温なので、どこまで考慮すべきか悩むところですね。

 

箱ヒゲ図で見る最低気温・最高気温の内訳

1ヶ月を平均してしまうと見えるものも見えなくなってしまうので、これを箱ヒゲ図で表現してみましょう。

tableauでは表示上の制約があるので、まずは東京で12月分を対象に作成してみました。

 

 

年単位の箱ヒゲ図と、25年分で見て第1四分位、中央値、第3四分位のラインを引いています。

最高気温で見ると、25年全体で見た中央値を第1四分位が上回っている年は無いようです。

最低気温で見ると、2004年、さらに2006年の中央値が第1四分位を上回っていて、あぁこの年は少なくとも東日本は暖冬だっただなぁ、ということがわかります。

ちなみに2006年12月、2007年1月の世界の月平均気温は1891年の統計開始以来最も高く、北半球での暖冬が観測されています。

 

2015年は、最高気温も最低気温も、年の中央値が25年分の中央値が上回っているので、暖冬傾向にあるとは言えるでしょう。とはいえ、言うほどでしょうか。

むしろ、過去4年連続で年の中央値が25年分の中央値を下回っている点から考えて、ここ数年と比べると暖冬であるという表現が適切かもしれません。

 

さて、その他に名古屋、大阪でもみてみましょう。結果は以下のとおりです。

 

 

 

 

東京と違って、名古屋も大阪も2015年はかなり暖かい部類に入りそうです。

特に名古屋では最低気温が25年全体で見た中央値を2015年の第1四分位が上回っています。また最低気温・最高気温ともに、25年全体でみた第3四分位を2015年の中央値が上回っています。

過去25年でみて名古屋は今年度が一番暖かいと言ってもいいでしょう。

 

また、東京と同じように、名古屋も大阪も過去4年連続で年の中央値が25年分の中央値を下回っていました(2014年大阪を除く)。

今年度の冬(2015年10月~)については、名古屋については記録的な暖冬ではあるものの、大阪、東京については過去4年と比べれば暖冬であるが記録的と言えるほどではない、という表現が適切なようです。

 

まとめ

ちゃんと集計してみると、意外に明確な傾向が出るものです。記憶に残る暖冬を記録した名古屋と、平均的な(ただしここ数年は寒冷だったので記憶に残りやすい)暖冬だった東京と大阪。

衣類という数年は着る肌着を思えば、久しぶりの暖冬ですから確かに冬物衣料は売れ行きがかなり鈍るかもしれません。

 

ですが、SAP化した企業であれば企画から販売まで3週間という短期間で冬物衣料の販売が可能なはずで、「想定を超える暖冬で業績への影響はかなり大きかった」というのは相関関係はあっても因果関係とまで言い切るのはいかがなものでしょうか

メリノウールのニットやスキニーデニム、スーピマのTシャツといったスローファッション革命を起こし続けている企業だからこそ(世間ではファストファッションだと言われているようですが)、暖冬以外の原因に目を向けて欲しいと思います。

以上、お手数ですがよろしくお願いいたします。