セ・パ交流戦廃止の危機!行く末を握るのはソフトバンクだ!

 

今回は、久しぶりのセイバーメトリクスです。今回のテーマは交流戦、ずばり来年以降も交流戦を続けるべきかを分析したいと思います。

 

2015年7月3日、史上初めて同じリーグ(今回はセ・リーグ)の6球団すべてが負け越すという悪夢が実現しました。

交流戦で、セ・リーグの球団がパ・リーグの球団に負けに負けたからです。セパのチーム同士が戦う交流戦が2005年に始まって以降、いつかはこうした事態が起こると思われていました。

試合数が半減された今年に限って起きたため、さらに交流戦不要論の声が高まっています。来年で終わりだと言う識者もいるほどです。

しかし、交流戦は2004年に起きたプロ野球再編問題をキッカケに誕生した「新たな希望」だったはずです。球団すべてが負け越したぐらいで、交流戦を終えていいのでしょうか?

 

何のための交流戦か?を定義する

プロ野球は他に様々あるプロスポーツと同じく、球団同士で試合を行うことで観客から入場料を徴収して「興行」を成り立たせています。

入場料の他にもテレビやラジオでの試合中継による放映権料、グッズ売上、球場での飲食費などが12球団にとって収入源と言えます。

もっとも、巨人や阪神のような人気球団を除けば、どの球団も年間20億〜40億程度の赤字だと言われています。球団の親会社が、その赤字分を広告宣伝費として補填しているからこそ、なんとか球団運営ができているという現状もあります。

2004年に起きた球団再編問題も、近鉄バファローズの親会社である近畿日本鉄道が1兆3000億円に達した有利子負債の削減策を実行する中で、維持費年間40億円とも言われる球団保有の是非が問われたことが発端になっています。

球団再編問題を受けて2005年から始まった交流戦は、当初は近鉄とオリックスの合併によりセ6球団・パ5球団となることの不均衡を補うものとして発案されました。しかし上記のような背景から、いつしか赤字球団の多いパ・リーグを人気球団が多いセ・リーグが救うことが陰の目的となっている部分もあります。

 

それ自体が良いか悪いかは置いておいて、これで分析軸はハッキリしました。

来年以降も交流戦を続けるべきかどうかが観点であれば、交流戦によってパ・リーグ主催の試合で集客数が増えているかを、まずは見ればいいのです。

 

交流戦で集客「率」は上がっているのか?

集客を「数」で見るとミスリードを起こします。なぜなら収容人数は球場によって違うからです。

一番大きい箱は甲子園球場で47,451人、一番小さい箱は宮城球場で25,723人、12球場の収容人数の標準偏差は約5840近くあります。よって1試合あたりの集客「率」(試合の集客数÷その球場の収容人数)で分析を行いたいと思います。

また、今回は分析期間を2015年の開幕からオールスター戦までを対象としました。2014年以前は交流戦の試合数が多くて一概に比較できないのと、なるべく「現状」によってのみ仮説を立てるためです。

 

まず、セパ両リーグの集客率(同一リーグでの試合のみ対象)を箱ひげ図で表してみました。その結果は以下の通りです。

 

図1:セパ両リーグの集客率(同一リーグでの試合のみ対象)
図1:セパ両リーグの集客率(同一リーグでの試合のみ対象)

 

セ・リーグの集客率の中央値が約88.48%なのに対して、パ・リーグは約72.85%と15%も違います。セ・リーグの集客率の下位四分位(25%)が約71.41%ですから、いかにパ・リーグが集客に苦戦しているかがわかります。

ちなみに外れ値が4試合ありますが、いずれも東京ヤクルト主催試合です…。

 

次に交流戦でのセ・パ両リーグの集客率で、箱ひげ図を作成してみました。その結果は以下の通りです。

 

図2:交流戦でのセ・パ両リーグの集客率
図2:交流戦でのセ・パ両リーグの集客率

 

パ・リーグの集客率が劇的に改善しているように見えます。中央値は約84.00%と+11.15%です。一方でセ・リーグの中央値は約80.96%と−約7.52%という結果になりました。

 

この結果だけを見ると、2つのことが言えるかと思います。

1つ目。プロ野球全体で見て、通常の試合より交流戦のほうが集客できているということです。

2つ目。通常より集客率が高い交流戦は「人気のセが赤字のパを救う」という表現で間違っていないですし、交流戦の(陰の)目的は達成しているということです。

一方で、これはセ・リーグにとっては旨味の無い話です。自社の売上を「救済」の名の下に他社に割り当てるというのは、社会主義のようにも思えます。

このままでは早晩に交流戦が廃止される可能性があるのではないでしょうか。

 

もう少し数字で表現していきます。

パ・リーグ主催の試合を通常の試合と交流戦に分けて、その集客率をt検定にかけます。t検定とは「2つの標本の平均に差があるときに、その差が偶然できたものか偶然とは思えないものかを判断する」ために行います。

帰無仮説は「通常の試合と交流戦で集客率に違いは無い(偶然である)」、対立仮説は「通常の試合と交流戦で集客率に違いはある(偶然では無い)」になるでしょう。

詳しい計算結果は省きますが、検定の結果、t値が2.596となりました。自由度240、有意水準1%のtの値はt分布表より2.595なので、帰無仮説は1%の有意水準で棄却されます。

つまり通常の試合と交流戦で集客率に違いはある(偶然では無い)のです。間違いなく交流戦のほうが集客率が良いのです。

ちなみに、通常の試合と交流戦の平均±2標準誤差を可視化すると以下のようになります。ほとんど被りはありません。

 

図3:通常の試合と交流戦での集客率平均と±標準誤差
図3:通常の試合と交流戦での集客率平均と±標準誤差

 

同じ要領でセ・リーグ主催の試合を対象にt検定を行います。

その結果、t値が-2.224となりました。自由度251、有意水準1%のtの値はt分布表より2.595なので、帰無仮説は1%の有意水準で棄却できません。ただし5%有意水準であれば棄却されます。

可視化すると以下のようになります。

 

図4:セ・リーグでの試合の集客率平均と±標準誤差
図4:セ・リーグでの試合の集客率平均と±標準誤差

 

有意水準とは簡単に言うと「誤判断のリスク」を指します。1%も5%もあまり変わりませんので、セ・リーグでも「通常の試合と交流戦で集客率に違いはある(偶然では無い)」と言ってもいいでしょう。間違いなく交流戦のほうが集客率が悪いのです。

この結果から判断するに、パ・リーグの球団を招いての興行は、セ・リーグほど集客できないと言えそうです。

やはり、交流戦はセ・リーグにとっては旨味のない興行だと言えます。交流戦は興行面から考えて片方にとっては「続けるべき」ながらも、片方にとっては「止めるべき」という矛盾を抱えた存在となっていることがわかりました。

このような対立事象が発生した場合、たいていは「より力を持っている側」の意見が採択されがちです。このままでは、交流戦は廃止される可能性が高いと言えます。

ちょっと予想外の展開になってきました。

 

巨人におんぶに抱っこはセ・リーグも一緒?

リーグの利害を対立させる存在となっている交流戦ですが、それを解決する鍵を考えてみました。

交流戦が始まったころ、「巨人を招いたドル箱を18試合分失った」という声があったと言われています。昔は対巨人戦というだけで膨大な放映権料を含めた本当のドル箱だったそうですが、現在ではそもそも地上波での野球中継がめっきり減って、メリットは「集客」ぐらいだと言われています。

ということは、セ・リーグの集客の高さは読売巨人軍の栄光のお陰ではないでないかと私は考えてみました。つまりセ・リーグのほうがパ・リーグよりも集客率は高いと言われていますが、それは読売巨人軍あってのことではないか、と。

 

そこでセ・リーグの球団を対象に、読売巨人軍を招いた試合と読売巨人軍以外を招いた試合の集客率に違いがあるかを見てみました。

可視化すると以下のようになります。

 

図5:セ・リーグにおける対巨人戦での集客率平均と±標準誤差
図5:セ・リーグにおける対巨人戦での集客率平均と±標準誤差

 

t検定の結果、t値が2.2475となりました。帰無仮説が5%有意水準で棄却され、「読売巨人軍を招いた試合とそれ以外のセ・リーグ球団を招いた試合で集客率に違いはある(偶然では無い)」と言えるのです。

もしかしたら、「集客率はセ・リーグが全体的に高くてパ・リーグが全体的に低い」のではなく、球団単位で集客率が大きく違うのかもしれないと考え、分散分析を実施してみました。分散分析とは「複数の標本に違いがあるかを分析する手法」です。

結果、p値が1%未満となりました。つまり、セ・リーグ6球団のなかで一概に集客率が同じぐらいとは言えないということです。

どの球団の集客が悪いのかを明らかにするために、12球団すべてを見てみましょう。

 

図7:球団ごとの集客率平均と±標準誤差
図7:球団ごとの集客率平均と±標準誤差

 

巨人軍の集客率の高さに注目が集まります。その他、広島カープや阪神タイガースの集客率の高さは鉄板と言えるでしょう。

また、意外な結果でしたが、読売巨人軍の次に集客率が高いのはパ・リーグのソフトバンクホークスでした。パ・リーグには既に「ソフトバンクホークス」というドル箱興行球団が存在するのです。

 

ソフトバンクホークスの存在こそ、交流戦におけるパ・リーグとセ・リーグの矛盾を解消するかもしれません。

なぜならセ・リーグにすれば「失われた対巨人戦」の代替球団になりますし、パ・リーグにすれば「パ・リーグでの対巨人戦相当」<・u>とも言えます。

これで、交流戦の矛盾は無くなるのではないかと考えました。

 

一方で集客率が低い順に並べると、殆どがパ・リーグで占められます。これは、どういうことでしょう?

 

パ・リーグを救うソフトバンクホークスは全国規模でファンを育成しよう

自チームが主催する試合の集客率ではなく、招かれた試合(アウェー)での集客率を見てみましょう。

 

図8:アウェーでの集客率の違いを可視化
図8:アウェーでの集客率の違いを可視化

 

広島カープ、読売巨人軍を迎えた試合の集客率が9割近いという結果になりました。

読売巨人軍を迎えた試合がいつも満員なのは、読売巨人軍のスター選手を見たいファンと、その選手を負かす自球団の選手を見たいファンが大勢集まるからだと私は考えています。

つまり、以下のような計算式になると思うのです。

 

集客率 =
 ホーム地域のホーム球団ファン数×ホーム地域のホーム球団ファンが球場に足を運ぶ率+
 ホーム地域のアフェー球団のファン×ホーム地域のアウェー球団のファンが球場に足を運ぶ率+
 撹乱項

 

読売巨人軍のファンは全国にいます。広島カープファンも女子層をガッチリ捕まえて、今や「カープ女子」は全国規模の言葉になりました。

しかしソフトバンクホークスのファンとなると全国にいると、言われても首をかしげてしまいます。鷹ガールも、ぶっちゃけ本州ではあまり聞きません。

 

ソフトバンクホークスがパ・リーグの盟主なのは間違いありません。間違いなく、九州圏では圧倒的な存在です。今後は九州圏以外でのファン拡大に努めていって欲しいと思います。

それが交流戦が続く最大のカギの1つであり、交流戦が廃止されたとしてもパ・リーグが二度と「暗黒の70年代」を迎えない最大のカギの1つではないかと考えます。