民進党のこれから:問題は「野党統一の是非」ではなく「根付かない地方組織」だ!

松本 健太郎

 

首相任期」「大阪都構想」に引き続き、計量政治学第3弾に挑戦します。

今回は第24回参院選の1人区野党統一候補11勝21敗の「戦果」を分析したいと思います。

 

この選挙では、民進・共産・社民・生活の野党4党が全1人区で統一候補を立てて戦いました。野党第1党と第2党が選挙協力するこの戦法を、野党側は「一定の効果があった」と総括し、与党側は「民共合作は野合」と非難しています。

つまり、与党側も「効果が無い」とは言っておらず、野党統一候補で勝ち得た11勝21敗という戦果は誇って良いものと誰もが思っている状況です。

しかし果たして本当でしょうか? ちょっと調べてみましょう。

 

改めて振り返る2016年第24回参院選

分析を進める前に、2016年第24回参院選(32議席11勝21敗)を振り返っておきましょう。焦点は1人区の戦果なのでそれに絞って毎度お馴染みのtableauを使ってグラフ表現をします。

そもそも参議院選挙って何?という人は、このwikipediaを見てください。

 

1人区の戦果が分かりやすくなるよう、2010年第22回参院選(31議席2勝29敗)、2013年第23回参院選(29議席8勝21敗)の戦果も含めておきました。

ちなみに2010年参院選は当時の菅首相がいきなり消費税増税を言い出した選挙で、前年からの民主党政治の混乱の余波か再ねじれが発生した選挙でした。

2013年参院選は再び政権交代して返り咲いた第2次安倍政権初の国政選挙で、脱ねじれ・与党単独過半数に戻った選挙でした。

 


2013年は宮城、新潟、長野は2人区。2010年は福島、岐阜は2人区。

 

2016年の選挙は東北・信越で野党が強く、関西以西で与党が強いようにも見えます

 

11勝21敗の内訳を確認する

データは合算値で見ると兆候が隠れる。これは鉄則です。

ですからコホート分析で32戦の内訳を確認しましょう。

1つは、立候補の形態として、民進党所属で野党3党が推薦・支持した場合と、野党4党共同推薦した場合の2種類があるのでその内訳を確認します。

もう1つは、与党に完全勝利したのか、接戦の末に命からがら勝利したのかを確認します。今回は接線の定義を「得票率5ポイント差」とし、以上での勝利を「勝」、以下での勝利を「優」、以下での敗戦を「劣」、以上での敗戦を「敗」としました。

 
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民進党所属での戦果と、無所属野党統一候補での戦果、大きく様相が異なることが分かります。

無所属野党統一候補が立った選挙区は2010年参院選で与党候補が勝利したため、立てる民進党候補がいなかったという背景もあるかもしれません。

それは地盤が弱い(与党系が強い)ことを意味しており、議員個人へのファンも少なく(是非はともかく)、そもそも勝てる見込みが無かった可能性があります。

 

そこで野党統一候補のメリットとデメリットを整理するため、11勝と21敗をそれぞれ以下の区分に振り分けてみることにしました。

 

4つの分け方。
4つの分け方。

 

この区分のミソは比較対象を2010年参院選にしていることです。

参院議員は任期6年ですから2013年と比較しても、いわゆる「議員票」がカウントできないのであまり意味がありません。(※大分選挙区、岡山選挙区など民主・自民で済み分かれている例は多い)

分類結果は以下の通りです。

 
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赤く塗ったマスは野党統一のメリットです。野党統一戦術があったから勝てたと言えます。②の山形、新潟、青森のうち、山形がドはまりしたのは有名ですね。④は沖縄です。

一方、青く塗ったマスは野党統一のデメリットです。国会議員を務めていたのに(或いは地盤・看板・カバンを受け継いだのに)落選したということは、票が逃げた原因の1つとして民共合作を理由としてもいいでしょう。

党勢衰退の可能性もありますが。

 

野党統一候補のメリット・デメリットは差し引きマイナス1という結果になりました。本当に野党統一は「良策」なのでしょうか

そもそも2010年参院選はアベノミクス真っ盛り、与党に最大の追い風が吹いていた選挙で、比較対象として最適とも思えず、私なら2勝29敗より8勝21敗を比較対象にします。

2010年は民進党が与党で、菅代表が消費増税を言い出して負けた選挙です。その結果と比べて、ほぼ横ばいとは。

 

区分することで明らかになった②と④の16敗は頭が痛い問題です。ここは野党統一しても勝てなかった選挙区です。再び「3分の2」を取らせないことを目的にするなら、野党統一以外の「票積み」が必要になります。

つまり、野党統一を「良策」とするなら(もし党首として与党の憲法改正阻止および政権交代を目指すなら)、それに加えて前回与党に投票した、および前回投票に行かなかった有権者に向けた「メッセージ」が必要になります。

なぜマスコミをそのことを突っ込まないのでしょうか?

野党統一だけでは3分の2阻止にも届きませんが、それに加えて何をするのですか、と。政策論争という答えが返ってきそうですが、それは「行動」では無いので却下です。

いま必要なのは、有権者が民進党に投票する「理由づくり」です。

 

比例区に維新の党との合併効果はあるのか?

意外と多くの人が忘れてしまっていますが、民進党は民主党と維新の党が2016年3月に合併して誕生した政党です。

したがって比例区では統一していない野党たちも、維新の党とでは票の上積みが見込めます。そこで2016年第24回参院選と2013年第23回参院選の比例代表得票差分を計算してみました。

 


縦軸が得票率になります

 

2013年第23回参院選では、維新の党の前身である日本維新の会は11.94%、みんなの党は8.93%、合わせて20.87%の得票率があります。

2016年第24回参院選では、維新の党から分裂したおおさか維新の会が9.20%、日本維新の会から分裂した日本のこころを大切にする党が1.31%、差し引いて10.36%が「維新の党との合併効果」と考えても良いでしょう。

ですが民主党と民進党で比較すると、得票率は13.40%から20.98%、たった7.58%しか上積めていません。2.8%マイナス分は何が原因なのでしょうか? 1~2議席程度のインパクトがある数字です。

ちなみに2010年代はいわゆる第三極と呼ばれる政党が離散集合を繰り返しているため、この差分を「政党の固定ファンだから止むを得ない」という見方もあるようです。

 

この6年間、離合集散を繰り返している。
この6年間、離合集散を繰り返している。

 

通常、企業買収をする際に、企業価値が目減りしたことに対して「買収前の企業のファンだったから仕方ないよね」で済ませるCEOなんていないと思うのですが、もう少し理詰めで考えます。

2016年と比較できる「直近の民意」としては、2013年第23回参院選より2014年第47回衆院選ではないかと考えます。そこで、この衆院選の得票率と比べてみましょう。

 

 

2014年第47回衆院選では、民主党は18.33%、維新の党は15.72%、合わせて34.05%の得票率があります。

一方で2016年第24回参院選では、維新の党から分裂したおおさか維新の会が9.20%、維新の党と合併した民進党が20.98%、合わせて30.18%の得票率で、合併後に3.87%も取りこぼしています。うち自民党が2.80%の得票率を伸ばすというオマケ付きです。

衆院選と参院選なので一概に比較はできないでしょうが、比例代表のような「ふわっとした民意」を党合併で掴み切れなかったので、合併効果は比例代表で見れば薄いと言えるでしょう。

※選挙区については野党統一しているので、ここで効果を見ても仕方ありません。

このあたりは馬淵澄夫議員も絶対得票率の観点で訴えているようなので、参考にして下さい。
http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-dd94.html

 

このまま野党統一で衆院選は与党候補に勝てるのか?

2014年12月に衆院選を行ったので、どんなに遅くても2018年12月までに再び衆院選が行われます。次回の参院選は2019年ですから、次の大型国政選挙で野党統一して与党に勝てるのか?を考えるなら、衆院選を見るべきでしょう。

参院選で2人区以上である8都道府県を人口集中型、1人区である34県を非人口集中型、この2つに分けて考えます。

2014年の衆院選は以下のようになりました。

 

与党系無所属が3名いるが、いったん野党としてカウントした。
与党系無所属が3名いるが、いったん野党としてカウントした。

 

もし全ての選挙区で野党統一が成った、とすると情勢は以下のように変わりました。

 

+87議席の効果。
+87議席の効果。

 

都市部で野党統一の効果は大きいことがわかります。それだけ野党系が立候補していて票が分散しているのでしょう。

一方で非人口集中型はそんなに逆転しません。

野党系って、もともと非人口集中地域に弱いのではないか?と考え、2003年以降の衆院選での選挙区議席獲得数を調べてみました。

 
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過去5回の選挙で、2009年の政権選択選挙を除いて、野党系が衆院選で非人口集中地域にて35議席以上獲得したことなんてありません。それを考えれば52議席獲得は快挙なのかもしれません。

 

それでもギリギリ与野党拮抗となる選挙なのです。もう1度、先ほどのグラフを見方は変えてみます。

 
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これは2014年段階の党勢だから、今はもっと獲得できると胸を張って言える民進党関係者ってどれくらいいるんでしょうか…。それとも3分の2阻止できるからそれでいいんでしょうか?この点をマスコミの方は突っ込んで欲しいですね。

ちなみに、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームが毎回公開する議席数予測では、大前提として「公示日から投票日前日までのネット上の注目度は、政党の得票数に直接的に相関する」としています。

第24回参議院選挙の議席数予測を振り返る(後編)
http://docs.yahoo.co.jp/info/bigdata/election/2016/03/

最近刊行された「情報参謀」という本でも、いかに露出を高めるかに苦心する姿が描かれています。

 

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情報参謀 (講談社現代新書)
小口 日出彦
講談社 2016-07-20

 

16年9月現在進行している党首戦を、民放各局は何回、何分取り上げてくれたでしょう。まさかそのデータすら手元に無い、ということはないでしょうか。心配です。

自民党はその辺が手練で、古くは金権田中にクリーン三木、指三本宇野に青年海部。擬似政権交代が似非であることがバレて以降、橋龍退任の後は総裁選で小渕・梶山・小泉でTVジャック、小泉の後は麻垣康三、常に話題を提供してきました。

 

また、おおさか維新の会あらため日本維新の会の存在があります。絶対に野党統一候補には組しないでしょう。したがって野党系の票が割れます。

実際、大阪は野党統一により+10議席が見込めますが、これは日本維新の会の協力ありきです。

今のままだと野党統一しても、自民、公明、日本維新の会が選挙協力して、総裁任期延長とセットで話が進み、自公維による第4次安倍連立政権が誕生するのがオチです。

 

つまり、野党統一は間違ってはいませんが、それだけでは政権は絶対に取れないのです。3分の2もちょっと怪しい。「あべ政治を許さない」と言っても倒れないものは倒れません。

与党の失敗を待つんでしょうか。それは本当に「責任ある野党」なんでしょうか。

 

おわりに

今回の分析は、政治の話に見せかけてクロス集計・コホート分析の話であり、野党統一の効果の話に見せかけて何を目標として効果と定義するかという話であり、要は分析の現場で起こりうる典型的な「ひっかけ問題」でした。

目の前の結果、全体の数字だけを見て評価を下すのは間違っていて、できるだけクロス集計・コホート分析をするべきだし、内訳を見てグループ間比較をするべきなのです。

皆さんの職場でお困りのことも、当然国政レベルで起こっているんですよ。というのが伝われば幸いです。

 

そして民進党関係者の方からはどうしたらいいねん!というお問い合わせをお待ちしています。データ分析基盤ぐらいなら作れますよ。

個人的には、龍が如く5みたいに、北海道の新党大地、東北の生活の党、関東・中部の民進党、関西以西の日本維新の会、公明で連立して、自民党に抗うしかないじゃん。とも思いますが。

以上、お手数ですがよろしくお願いいたします。

 

おまけ

 


2001年以降の国政選挙での選挙区の各都道府県単位の得票率

 

 


2001年以降の国政選挙での比例区・比例代表の各都道府県単位の得票率

 

 


2016年第24回参院選の1人区得票率内訳