ボクたちの命を救うAEDの設置場所をデータから提案してみる

 

以前知人と待ち合わせをしている時、隣にあるモノがありました。それは「AED」です。僕が知人を待つようにAEDも活躍するその時を待っていました。

そんなAEDを見てふと思ったことがあります。「使う日が来るのだろうか(こない方が良いに決まってる)」「AEDって何台あるんだろう?」「本当に人を助けられるのか?」などなど。

ということで、今回は改めてAEDについて理解していきながら、データ分析から「どこにAEDがあると良いのか?」について考えて見ます。

 

そもそもAEDとはなんぞや

そもそもAEDってなんだっけ?どんな場面で活躍するんだっけ?という方もいるかもしれないので、もう一度確認してみましょう。

AEDとは「Automated External Defibrillator」の略称で「自動化された体外式の除細動器」という意味になります。

つまり、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器ということです。

 

なんだか難しそうと思う方もいると思いますが、AEDは自動で患者の状態を判断してくれて、しかも音声で正確に指示をしてくれるという優れものです。

なので一般市民の方でも救命活動をすることができます

消防白書によると2014年の一般市民のAED使用事例は約1,600件あったそうです。これを多いととらえるか少ないととらえるか。

どちらにせよ私たちがバイスタンダーとなる確率は0ではないので、頭の片隅に入れておかなければいけないことだと思います。

 

AEDの設置数はどのくらい?

いつどこで、自分が心停止で倒れるかはわかりません。それならAEDはどこにでもなくてはいけないし、相当な数が必要になります。今のところ日本にあるAEDは約50万台を超えるようです。ものすごい数ですね…。

今回は東京都に焦点を充てて分析していきたいと思います。まずは東京都のAEDの設置状況について見てみましょう。データは「AEDオープンプラットフォーム」というAEDに関するデータが無償で提供されていたのでこちらを使用します。

 

東京都内の市区町村別の設置件数
東京都内の市区町村別の設置件数

 

市区町村別でのAEDの数を可視化してみました。まだまだ登録数が少ないので市町村だと特に件数が少ないですね…。もっとAEDに関するデータを公開して欲しいところです。

区内だと人口が多いせいかそれだけAEDの設置数も多いようです。足立区では約700台もあるようです。
 
 

ホットスポットの検出

 

それではAEDの最適な設置場所について考えてみます。

調べてみたところAEDは1台購入するのに30~50万円ほどするようです。なので、むやみに各地域の穴場に設置するなんてことはできなさそうです。

また、単純に考えると「急病患者が多い地域に設置する」となりますが、それだと人口が多い地域になってしまいがちなので、今回は急病患者が現れる確率が高い地域(ホットスポット)を特定していきたいと思います。
 
まずはShapeファイルを使って、市区町村ごとの急病患者数のコロプレス図を作成します。Freq.csvにはあらかじめ市区町村別の総人口や患者数などのデータを作成しておきました。

 

library(maptools)
jpn <- readShapePoly("JPN_adm2.shp")
tokyo <- jpn[jpn$NAME_1 == "Tokyo",]
Freq <- read.csv("Freq.csv")
tokyo@data <- cbind(tokyo@data,Freq[,2:10])

library(RColorBrewer)
brks <- c(0,500,1000,1500,2000,3000,4000,5000,6000)

 

市区町村別心肺機能停止患者数
市区町村別心肺機能停止患者数

 

考察としてはやはり人口の多い地域ほど患者の数は多い傾向にあるということがわかります。「世田谷区」「大田区」「足立区」がTOP3になっており、市では「八王子市」と「町田市」が目立っています。

 

次に昼間人口と患者数のデータを用いて確率地図を作成してみます。

ところで、人口を分母とする比率をコロプレス図上に表現するとき、率の高低が分かりにくくなります。

そこで、対象地域全体の率が一様であると仮定した場合に予測されるある地域の期待値と観測値(患者数)の比をとる標準化指標を用いることで高低の判断ができるようになります。

 

期待値 = ある地域の人口 * ( 患者数の合計 / 人口の合計 )
ri = ある地域の患者数 / 期待値

 

 

E<-tokyo@data$Daytime * (sum(tokyo@data$Cardiac_arrest)/sum(tokyo@data$Daytime))
r <- tokyo@data$Cardiac_arrest/E
tokyo@data <- cbind(tokyo@data,r)
brks <- c(0,0.6,0.8,1,1.2,1.4,1.6,1.8)
spplot(tokyo,zcol = "r",at = brks,col.regions = brewer.pal(8,"Blues"))

 

市区町村別心肺機能停止患者数の標準化
市区町村別心肺機能停止患者数の標準化

 

標準化したコロプレス図を見てみると、「檜原村」が一番高くなっていることがわかります。そして、患者数が多かった区ではそこまで標準化得点は高くありません。
 
しかし、この方法だと人口が小さい地域でrの変動が激しくなってしまうんです。

例えば、単純ですが「地域Aの患者数は100人で期待値は50人」で「地域Bの患者数は3人で期待値は1.5人」だったとします。この場合はどちらもrが2になります。

 

患者数 期待値 r=ある地域の患者数/期待値
地域A 100 50 2
地域B 3 1.5 2

 

そこで両方の地域で患者数が1減ったとします。そうすると地域Aでのrは1.98で地域Bでは1.33となり地域Bは地域Aより変動が大きくなります。

 

患者数 期待値 r=ある地域の患者数/期待値
地域A 99 50 1.98
地域B 2 1.5 1.33

 

このような問題は「少数問題」と言われています。

この問題については、確率論を導入することで解決することができます

 

地域の患者数発生数に対して地域人口が十分に大きいときポアソン分布に従うと仮定し、地域ごとの急病患者の発生リスク確率を計算します。

計算した確率が例えば「p<0.05」のとき、発生確率は有意に大きい(小さい)ということになります。

Rではspdepパッケージのchoynowaski関数を用いることで確率地図の計算をすることができます。

 

library(spdep)
res <- choynowski(tokyo@data$Cardiac_arrest,tokyo@data$Daytime)
lt005 <- (res$pmap < 0.05) & (res$type)
ge005 <- (res$pmap < 0.05) & (!res$type)
cols <- rep("white",length(lt005))
cols[lt005] <- "#4682B4"
cols[ge005] <- "#FA8072"
plot(tokyo,col = cols)
legend("left",fill = c("#4682B4","#FA8072"),legend = c("low","high"),bty = "n")

 

ポアソン確率地図
ポアソン確率地図

 

赤く塗りつぶしているところが患者の発生確率が有意に高く、青く塗りつぶしているところが患者の発生確率が有意に低いと読み取ってください。

この結果から有意に高い地域(ホットスポット)は優先的にAEDを設置したほうが良いと考えられます。

区には結構な数が設置されているので十分かと思いましたが、山手線内はまだまだ足りないのかもしれません。

 

最後に設置場所を考える

 

最後に患者の発生リスクが有意に高い地域の中から一つ選んで、AEDをどこに設置するかを考えていきます。
 
心停止後に脳細胞が死に始めるのは3分後となっています。そして、心臓や呼吸が止まった人が助かる確率は、何もしない場合だと3分後には20%しかないと言われています。

119番通報をしてから現場に救急車が到着する時間は平均で7分42秒なので、救急車が到着する頃には助かる確率は10%程度になってしまいます。

つまり、目撃した人が早急に応急手当をしなければ、助かる確率はかなり低いということです。

 

そこで、AEDの位置情報をもとに倒れてからすぐに目撃されれば助かる確率が高い地域を可視化してみたいと思います。

AEDを3分以内で取りに行って戻って蘇生活動が始められる距離を200mとし、AEDの設置場所から半径200mのサークルをプロットします。

今回は既存の設置箇所のデータが豊富であった「足立区」を例にしてみます。

 

library(leaflet)
Address <- read.csv("Address.csv")
poly <- read.csv("data/poly.csv")
m <- leaflet(Address)%>%addTiles()
m%>%addCircles(lng = ~longitude,lat = ~latitude,radius = 200,color = "#4682B4")%>%addPolylines(data = poly,lng = ~longitude,lat = ~latitude,color = "black",weight = "8")

 
14518746_566848950184396_270730871_n
 

サークル内であればAEDが近くにあるので、助かる確率は高くなります。サークル外だとAEDが200mよりも遠くにあるのでそれだけ助かる確率が低くなります。

けっこうまばらにAEDが設置されていることがわかりますが、オレンジ色の円で囲った部分にはあまりAEDが設置されていません。このあたりは抜け目部分といえるでしょう。

しかも、ランニング・サイクリング・ウォーキング各コースがある舎人公園も円内に含まれています。まずはこのあたりに設置しておくべきなのではないでしょうか。

 

まとめ

 

今回は患者の発生件数やAEDの位置情報を用いて、どこにAEDを設置するべきか検討してみました。

しかし、AEDの位置情報のデータが少なかったのが少し物足りない感じがします。やはりこのような情報はもっとオープンにして欲しいと思いました。

AEDに関するデータの帰属権・著作権は企業に即している場合が多く、研究所が自由に分析・発表することは許されていないようです。これって変ですよね…。

また、患者がどこで出現したのかという位置情報もあったりするともっと詳細に検討することができたのではないかと思います。

AEDが近くにあるのに助からなかった患者が多いとか、その逆があったりしたらそれは役立つ発見だと思います

 

今回の分析を通して、もしも自分がバイスタンダーとなった場合には迅速な対応が必要なのだと改めて感じました。