ダイレクト・マーケティングにおけるバナーimpの影響と広告効果

一般的に分析・見解の複雑さ、その膨大なデータ量から、公開可能な事例は少ないので、とても参考となる結果となっています。
※実際は数ページに及ぶ分析結果となっていますが、今回はわかりやすい一部分をピックアップして公開させていただきます。
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はじめに

アトリビューションというキャッチーな言葉と共に、第三者配信アドサーバが隆盛を迎えつつあり、海外事例を中心に、様々なデータが巷に溢れています。しかしながら、バナーimpの影響力がフリークエンシーや接触するユーザー層毎にどのように変化するかという視点で記述されたデータは少ないです。そのため、ここでは接触広告によりユーザー層をセグメントし、フリークエンシーマネジメントを絡めた形でバナー配信の影響力について検証しました。

題材として、PCブラウザでの女性向けECを用いた、ダイレクトマーケティングを代表する大きな市場における各広告とバナーimp特性の関係を明確化し、最も効果的な配信方法を探ります。

検証方法と目的

バナー配信を検証するに当たり、特にユーザー単位で見ているDSP(Demand Side Platform)などを複数配信している場合は配信の重複が起きることが前提となり、特にリターゲティング配信が含まれている場合は重複のオンパレードになります。それを全て補足できない限り、フリークエンシーマネジメントは成立しません。そのため、第三者配信アドサーバを用いて全ての広告を補足する方法で実験しました。あるユーザーの広告接触とimpをフューチャーし、その相関性を検証します。

各種条件

対象ジャンルECサイト
対象広告各種ディスプレイ広告、各種リスティング広告、各種アフィリエイト広告、各種純広告
対象デバイスPC
実験期間約1カ月
対象クリック約80,000
対象CV約4,500
対象バナーimp約1,700万(ノンリターゲ:約1,000万 / リターゲ:約700万)
※ノンリターゲはオーディエンスターゲティング、キーワードマッチなど

(検証01)バナーimpとユーザー流入の相関性について

あるユーザーに対してバナーにより初期接触した影響を検証するため、全体のCVに占めるimpのみのCVの割合と、推定されるユーザー動向を下図にまとめます。

 

バナーimpのみでCVしたユーザー動向推定図

広告によるトラッキング漏れ、もしくは、今回の実験以前からマーク付されていたユーザー等は割合が小さいため無視する前提とした場合、上図のようなユーザー動向が推察できます。ノンリターゲバナーからクリックなしでリターゲバナー配信へ切り替わる場合は自然流入によりマークがついていると想定されることから、バナーのimpで一定割合の自然流入を促すことが可能という仮説が成立します。

また、これらのCVを含む、バナーimpのみでCVへ至ったユーザーはnon-retargeバナーが初期接触でCVした全体の54.9%を占めました。つまり、オーディエンスターゲティング、キーワードマッチ配信等、ある程度オーディエンスが絞れたターゲティング配信をしている場合、接触したユーザーのimpで自然流入を促すことが結論を導けます。

これらのことは、各ディスプレイサービスにてPCC(Post click conversion)のみを着目していると、実際には促したCVの45%しか反映できていないかもしれないという仮説を導き、少なくとも何らかのターゲティング配信に関してはPVC(Post view conversion)は有効という理屈が成立し、深めの潜在層にアプローチする際においては結果が変わってくると想定できます。一般的なバナー配信の相当な割合をターゲティング配信が占めていることを前提とすると、比較的顕在層に近い潜在層へのビューによるバナーの促進効果が証明できた結果と言えます。

(検証02)FQとCVの相関性(imp比率)

次に、フリークエンシー(FQ)とCVの相関性について検証しました。純粋なCVとFQの相関データについて、偶然性をなるべく排除するため、1CVのみが発生したFQは雑音とみなして0と仮定した場合のCV割合を図にまとめました。ノンリターゲの場合、一定のFQを超えた時点でほぼCVが発生しなくなり、リターゲはFQが増えれば増えるほどCVが発生しやすくなるという傾向が見て取れます。

ノンリターゲ配信の対象ユーザーは出稿主サイトへ接触していないことを前提とすると、バナーにより初期接触したユーザーが早い段階で興味を示す(ここではクリック)ことがなかった場合、早めに見切ることが得策であり、一度でも広告クリックなどでサイトヘ接触したユーザーに関しては、粘り強く配信を続けることが得策であるという傾向が示されたと言えます。少なくともFQにおける傾向は明確に確認でき、FQマネジメントがバナー配信において非常に重要であるということを示す結果となりました。

ノンリターゲバナーの
1000imp毎のCV数推移

 

リターゲバナーの
1000imp毎のCV数推移

 

ノンリターゲバナーの
1000imp当たりのFQ毎のCV数割

~FQ10FQ11~99FQ100~
81.14%16.87%1.99%

リターゲバナーの
1000imp当たりのFQ毎CV数割合

~FQ10FQ11~99FQ100~
60.67%33.33%5.99%

※FQ(フリークエンシー):1人のユーザーが同じ広告に接触する頻度。リターゲティングバナーの性質上、非常に高い接触頻度で広告を配信可能ですが、「付きまとわれている」といったマイナスイメージを与えかねません。そのため、リターゲティングバナーの適切な接触頻度はどのように設定すべきか、マーケターの課題となっています。

(検証03)FQとCTRの相関性

ノンリターゲ配信に関しては早めの見切りをつけることが効果的という結論を疑う意味で、新たな角度から検証しました。ここまでの検証は、ある類似のバナー群を前提としたものでした。そこで、あるFQになり興味を示さなかったユーザーへバナーを変更することでCTRがどのように変更するかを検証しました。

 

ある配信において、CTRが極端に下がるFQ15を超えた時点で、バナー群を変える施策を実施したところ、同じバナー群を流し続けた場合と比較してCTRが相対的に相当な割合で上昇しました。バナーの良し悪しも大きく影響するため数値変化の比率を明確に示すことはできませんが、バナーを見飽きたユーザーへ配信バナーを変更することによってCTRが復活するという傾向は明確に確認することができたと言えます。

従いまして、バナーを変更し続けることで配信量によるCTR下降のFQ依存を極限まで減らせるということが、原理上は可能であると言えます。

まとめ

バナーimpの影響力は接触するユーザー層によって顕著に変化することを示すことができました。その中でも、配信対象が絞れた場合はimpのみでユーザーの流入を一定の範囲で促進可能でことが明確に示されたことは大きな成果であると考えています。

今回の結果は一事例の結論であるため、あくまでも傾向が示されたという結論に過ぎません。しかしながら、ユーザー層とその反応という仮説から導ける考え方と結論が近い結果となり、効率的な配信方法、非効率な配信方法について一定の方法論が導ける結果となったことは一定の成果であると考えています。今回の結果が、少しでも皆様の運用の参考になれば幸いです。

<マーケティングメトリックス研究所からのひとこと>

検証から一定の仮説を導く結果となり、見ているこちらもワクワクするような有意義な内容になっていると思います。特にフリークエンシーの部分については導入サービス・運用体制によってできることも限られてきますので、こういった検証結果を元にオペレーションポリシーの設計をしていくことが(地味ですが)とても大切なことです。

今回はバナーに特化した分析のため、バナー広告単体でのレポートとなっていますが、他の広告やコンテンツも含め、個々が消費者に与える影響を理解することで適切なマーケティングのサイクルを回すことができるようになると思います。

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