見れば見るほど好きになる!? 単純接触効果と広告の関係

突然ですが、マツコ・デラックスは好きですか?

私は、最初はただのおねえのコメンテーターぐらいにしか思ってなかったのですが、
テレビで見ない日はないし、だんだん小奇麗になってきているし、それっぽいこというし、
今はどちらかというと好きかも。
#そして、何といつの間にか2016年上半期のCM女王(?)になってるし。

この何とも思っていない人が好きに転じる現象ですが、
実は心理学が関係している!?
かもしれません。

 

単純接触効果とは?

ちょっと前だと剛力彩芽ちゃんとか、
今旬の高畑充希ちゃんとかもそうだと思うのですが、
メディアに取り上げられる機会が増えて、
最初は、ただ”ああ、新しい子やな”とか、
”なんやこの子は”と思っていただけのものが
接触回数が多くなるほど、「好きになる」という状態につながります。

この効果は、心理学で「単純接触効果」と呼ばれるもので、
広告でもよくある現象です。

「単純接触効果」は、ザイアンスさんというアメリカの学者(生まれはポーランド)が
実験によって明らかにした感情と認知の関係性です。

ザイアンスさんが行った実験は、
未知の言語(漢字*1)を実験参加者(アメリカ人)に見せ、
その文字が良いか悪いかを判断してもらうものです。

コントロール(統制)条件は文字の表出頻度で、
表出頻度で感情が変わるかを実験しています。

結果は、「表出頻度が高い単語のほうが良いと判定されるケースが多かった」わけです。

では、実際に現実世界ではどうでしょうか?

好感度とメディアの露出度

現実世界での単純接触効果を見るために、
日本の女優さんに関する好感度とメディアの露出度
関係性についてのデータを見ていきたいと思います。

まず、日経エンタテインメントで2016年のタレントパワーランキングを見ていきます。

女優さんのパワーランキングのリストは、下記の表の通りです。
パワーランキングは、女優さんの認知度と関心度から成り立っています。

つまり、知っているか知らないか、
見たいか見たくないかといった指標になりますが、
当然知らないと見たい見たくないといった判断はできないので、
パワーランキングは認知ありきではないかと思います。

このリストに、好感度得点と露出度得点を足していきます。
好感度は、ビデオリサーチさんが行っている
女性タレントの人気度(*2)をもとに割り出します。

51位以下はゼロとして、1位50点、2位49点…と出していきます。
露出度は、2015年のCM契約件数と民放ドラマの出演数です。

さらに、吉永小百合さんがいることから、
過去の大河朝ドラ(主役もしくは準主役)の本数も入れました。

表にしてみると、下記の通り。
総合点は、好感度とパワランを足した数値になります。

次に、露出度は好感度と関係あるか、相関係数を割り出してみました。
結果、露出度と好感度の相関係数は、0.06と相関はありませんでした。

パワランと露出度に関しては、0.34とこちらはやや相関ありで、
好感度とパワランを合わせた総合点と好感度は、
0.17と相関があるとは言えない結果になってしまいました。

こちらのデータですが、たぶん露出度のデータが足らず、
バラエティの出演、2015年以前の民放ドラマなども
加算しないといけないような気がします。
あとはデビューからの年数も関係ありだと思われます。

ちなみにパワーランキングと好感度との相関は、0.60でこちらは大いに相関があり、
認知・関心は好感度と関係ありという結果でした。

まとめ

ザイアンスさんの単純接触効果では、
接触時間より接触頻度が重要だと考えられていたが、
ここでいう芸能関係の好感度は、接触頻度より接触時間が関係しそう。
そのため、過去のデータも必要。

「接触時間=メディアの露出度」とするのであれば、
接触時間を洗い出すのは、しんどそう?

パワーランキング(認知度&関心度)と好感度は相関あり。
しかしながら、今勢いがある人と好感度の高い人は必ずしも比例はしない。

好感度、パワーランキングの高い女性タレントは、
クリーンなイメージであるべし(「不倫」「事務所トラブル」はご法度)。

露出度は、好感度だけではなく政治的な要素(事務所や芸能界のパワーバランスとか)も絡む。
この場合、露出度は好感度を上げる要因とはならない場合あり。
そして、勢い的なものも政治的な要素が絡むのでは?

ザイアンスさんの理論をまっとうに解釈すると露出度→好感度となるが、
単純にそうはいかない。
芸能人の場合は、好感度→露出度といった場合も多い。

マツコ・デラックスは男性カテゴリーに入れればいいのか?
それとも女性カテゴリーに入れればいいのか?

 

おまけ

好感度、パワーランキング、CM契約数、2015年ドラマ出演数を独立変数、
朝ドラ+大河をNHKでたことある(1) or ない(0)変数を従属変数として、
判別分析をおこなってみました。

すると、現段階でNHK変数が0である松たか子さん、菅野美穂さん、
長澤まさみさんが1と判別されました。

菅野美穂さんは、NHKの朝ドラに準主役級ででていたこともあり、
2016年後半の朝ドラにも出演決定したので、
NHKでたことある変数に加えてもいいかもしれませんでした。

メディアの露出を拾うのは、ほんとむずかしい…。


*1 アルファベットになじみのあるアメリカの方々にとっては、漢字(中国語)は未知のものなのです。
*2 ビデオリサーチ様の許諾を得て掲載

【参考資料】
Zajonc, R. B. (1968). Journal of Personality and Social Psychology Monograph Supplement,American Psychological Association, 9(2), 1-27.

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